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大川 美里さん: リアルでできない演出をオンライン演劇で実現

Hirotaka Nakagawa

2021年8月5日

パンデミックのため劇場での公演が行えない中、オンラインで新しい試みを始めた人たちがいます。大川美里さんもその一人。mmhmm を早くからオンライン演劇に活用されています。ウェブディレクターとして働きながら女優を続ける大川さんに、mmhmm を使った演劇についてお話を伺いました。

女優になったきっかけは?

中学・高校は演劇部、大学ではサークルで演劇をやってきました。ずっと演じるということが好きでした。卒業が近くなり就職活動の時期にいろいろ考えた結果、一度表現の世界に飛び込んでみたいと思い、劇団に入りました。劇団にいたり、フリーになったり、紆余曲折はありましたが、演じるということについてはずっと続けてきました。

オンライン演劇との出会いはどのようなものでしたか?

パンデミックの前はオンラインで芝居をするということは考えたこともありませんでした。2020 年の 2 月くらいまでリアルの対面での舞台に出ていてました。その頃はまだ「コロナというものがあるらしい」ぐらいの感じだったので、普通に舞台ができる状態でした。その舞台が終わって「次はなにができるかな」などと思ってるときに、パンデミックになりました。

私が出ている舞台は小さな劇場が多いので、公演ができなくなってしまいました。でも「演劇がなくなるわけがない。役者として表現したいというこの気持ちをどう昇華したらいいんだろう」と思い、Zoom を使って演劇ができるものか、友達と試しに二人芝居を練習したり模索していました。そのうち、オンラインで演劇を始める人が出てきたり、実際に誘っていただいたりして、「モノステ」というオンラインのモノローグ(一人芝居)イベントに参加するようになりました。

オンラインでのパフォーマンスはどうでしたか?

初めてオンラインの舞台に出た時には、「オンラインで一人芝居をする」ということの表現の仕方が分かっていませんでした。1 回目出た後に、映像に変化があったり、驚きがあったり、「絵が面白い」方がお客さんは楽しいのだろうなと思ったんです。リアルの演劇だったら、しゃべって、表情で表現して、でいいのでしょうが、オンライン演劇はテレビとも YouTube とも違います。生で、しかも面白い絵が見られるのがいいのだろう、と思いました。

「Zoom で面白い絵作るにはどうしたらいいかな」ということで mmhmm を思いつきました。というのも、普段、ウェブディレクターとして、いつもネット系の最新サービス、ツール、ガジェットをチェックをしているので、mmhmm を知っていて、ビデオ会議で使っていたりしたんです。

例えば、Zoom ではフェードイン・フェードアウトができないですし、演劇ではスポットライトが当たるような形でふわっと登場したいことがあるのですが、それもできません。mmhmm の機能は演劇でも活用できると思いました。

エレベーターの前で演技をする女性

mmhmm を使った評判はどうでしたか?

mmhmm を使った演出には、とてもびっくりされました。「この演出どうやったの?」と、すごく聞かれましたね。また「動画が流れてると思った」とも言われましたね。いや、「生ですよ」と(笑)。

モノステでは公演が終わった後に、出演した 5 人ぐらいの演者さんで楽屋トークのようなものをするんですが、その時の質問のほとんどが、演技よりも、「あそこの小さくなったのはどうやったのか」「どうやって消えたのか」といったものでした。作家の方も、イベントのプロデューサーの方も、皆さん「どうやったの??」をすごく気にしてましたね(笑)。それを全部 mmhmm というアプリがあって、こういう風に操作して…、と解説しました。 

クリエイティブプロセスに変化はありましたか?

いつもだったら自分のやりたい台本があって、それを読み解いて演出を考えていくのですが、mmhmm を使うようになってからは、「mmhmm を使って面白くできる作品はどれかな」「映像で遊べる作品はどれかな」という視点で探すようになりました。「中途半端女優」はまさにそういう理由で選んだ作品です。劇中にプレゼンテーションもできるし、自分のタイミングで消えたり出たり、頭の中を映像にしたりできるので、これは面白くなるのではないか、と思いました。

コンピュータとカメラ

オンラインになってよかったこと、逆に、リアルのほうが良いな、と思うことはなんですか?

よかったことは、練習のためにわざわざ、どこかの稽古場に移動してみんなで会って、という時間が短縮できたことです。自分の好きな時間に、グリーンバックを用意すればすぐに、自分のペースで練習できるようになりました。それから、先日、名古屋にいる方と共演したのですが、そんなに遠くにいることを全く知らずに共演しました(笑)。遠隔の方と気軽に共演できたりするのも、面白いところだなと思います。

また、自分の画面全体を使って表現するというのは、テレビとも演劇とも違って、自分のクリエイティビティ、そして想像力を一段階上げられたと思っています。

一方オンラインで足りないところは、反応がわからないところですね。観客の皆さんが楽しいんでるのかどうかがわからない。チャットがあって、盛り上がったりしているらしいのですが、演じている間は私はカメラを見ていなければならないわけです。対面の演劇であれば、お客様の反応を見てそれに応じることもあるのですが、それができないのは、オフラインとオンラインの違いですね。

また対面での演劇ができるようになったら、このオンラインでの演劇は続けると思いますか?

両方やりたいですね。自分で絵を作るのが楽しくて、これはこれで続けたいし、対面は対面でやりたいです。

ビデオをもっと上手に活用したいという方に、アドバイスはありますか?

まず録画して、自分で見てみるということですね。実際に録画したものを見てみると、「何か思ってたのとちょっと違うな」ということは意外と多いです。mmhmm Chunky では録画のやり直しもより簡単になるということですので、その機能を活用し、何度も撮り直して、自分が観客の視点で見てみるのが大事だと思います。 

ポーズをとる女性

(このインタビューは実際の発言を編集したものです。)

なお、インタビューの模様と大川さんが演じる『中途半端女優』を mmhmm Summer でご紹介しました。ぜひ以下の動画をご覧ください。(日本語字幕をオンにしてご覧ください。)