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AI のもたらす混乱と実態

Team mmhmm

2025年3月28日

生成 AI のビジネス界での利用が広がる中、AI が進歩をもたらしているのか、あるいは過大評価されているだけなのか、議論は続いています。最近の Pew Research の調査によると、労働者の多くが職場への AI の影響を懸念し、将来的に仕事が減ることを恐れていることが分かりました。

それでもなお、AI を活用した新しいツールは次々と登場し、時間を節約し、業務を自動化し、人間がやりたくない作業を請け負っています。mmhmm では、1,000 人のナレッジワーカーを対象に調査を行い、AI が本当に役立っていると感じる場面と、逆に邪魔になっていると感じる場面を探りました。

多くの労働者は職場での AI 活用に概ね前向きです。しかし一方で、人々は混乱しています。AI がすでに存在していることを知っており、その活用に関心を持っているものの、実際にどのように役立っているのか、何をしているのか、そしてその結果を信用すべきかどうかについては戸惑っているのです。mmhmm の調査では、AI には中核業務の代替ではなく、自分たちの業務サポートを望む声が多く聞かれました。実に 91% の人が AI を活用して仕事の効率を向上させたいと考えています。が、意思決定の支援を受けたいとは思っているものの、決定を完全に AI に委ねることには抵抗があります。

特に興味深いのは、信頼の問題です。調査対象者は、AI の活用には信頼性が求められると指摘しています。そして、完全に AI に業務を任せると、それが損なわれる可能性があります。ユーザーは、自分が使っているツールやアプリが AI を利用しているかどうかを知りたいと考えています。67% の人が、AI が使用されているときに通知してほしいと答え、特に経営層ではその割合がさらに高くなりました。しかし、AI 機能が組み込まれていることを常に見抜ける、と答えた人は、わずか 12% にとどまりました。

20% ignore AI options; 15% actively avoid AI assistance; 26% use AI but don't notice a difference

これは開発者にとって課題となります。というのも、AI の利用を明示する必要がある一方、生成 AI が組み込まれていることでユーザーが拒否反応を示す可能性があるからです。

AI の価値を示す点について言えば、初期の生成 AI の話題は、人間が書いたような文章を作成する能力や、興味深い(しかし、場合によっては不気味な)画像を作成する能力に集中していました。しかし、これらの画像には問題があります。調査対象の労働者のほぼ半数が、AI 生成の画像を「不自然」と感じているのです。

Illustration: a person sitting on a block representing AI support celebrates what they see on their laptop
71% want AI to help them make decisions; 55% find AI useful for summarizing data; 37% find value in automation

根本的な問題は信頼性にあります。人々はオンラインで画像を見るとき、あまりに完璧すぎる画像を信用することができなくなり、それが熟練の職人技によるものなのか、それとも無機質なアルゴリズムの産物なのか区別できなくなります。その一例として、コカ・コーラがホリデーシーズンにほとんど AI モデルだけで作成された動画広告を公開した際、批判を受けたことが挙げられます。

The Broad Perspective Pod の Megan Cruz 氏は、この問題を次のように要約しています。「AI は常に、このようなことに使われる予定だったのです。決して社会の平等を実現するものではありません。すでに莫大な富を持つ経営者たちが、クリエイティブチームを完全に排除し、機械に退屈な仕事を吐き出させることで、年間ボーナスをさらに数百万ドル増やすための手段なのです。」

皮肉なことに、仕事で AI を活用すればするほど、人々はその成果を信頼しなくなる可能性があります。日常的に AI を使用する人の 44% は、「欠陥のある画像でない限り、オンライン上のどんな画像も信用しない」と答えました。これは、週や月に数度の頻度で AI を使用する人の回答よりも高い割合です。全体としては、35% が「欠陥のある画像でない限り、オンライン上のどんな画像も信用しない」と回答しました。

また、ブランドとコンテンツに対する信頼の関係には、興味深い二面性があります。人々は企業が AI を使うこと自体にはある程度寛容ですが、そのコンテンツの信頼性には厳しい視線を向けています。

コンテンツそのものについては、AI 利用が開示されているか否かにかかわらず、人々の懐疑的な態度は一貫しています。AI の使用が開示された場合、52% の人がそのコンテンツをより懐疑的に見るといい、一方で、開示されていない場合、その数字はわずか 2 ポイント上昇するだけでした。しかし、ブランドへの信頼については、AI の使用が開示された場合に 42% が疑念を抱くのに対し、開示されなかった場合にはその割合が 11 ポイント上昇しました。

つまり、人々が何かを信頼しなくなると、その対象は画像だけでなく、それを提供したブランドにも及ぶのです。画像が完璧すぎて人間味を失っていると感じた場合、58% の人がそのブランドへの信頼を失うと答えています。

A stamp reading "Created with human intelligence / Powered by AI"

結局のところ、企業は生成 AI のコンテンツ制作には手を出さない方がよいのかもしれません。そのメリットがコストを上回るかどうかが不透明だからです。しかし、ライターの執筆を助けたり、グラフィックデザイナーの創作を補助するなど、AI が人間を支援できるような場所では、AI の活用は合理的と言えるでしょう。言い換えれば、仕事の背後にある人間性を失わないことが重要なのです。

※この記事は 2 部構成レポートの前編です。後編はこちら:「AI に対する経営者と現場の温度差