パンデミック中に家から働くことを認めてきた会社も、オフィスでの働き方に戻る準備を進めています。Apple は安全が確認され次第、社員をオフィスに戻すようです。また、Google の CEO・Sundar Pichai 氏は New York Times の取材に対し、「ホワイトボードを使いながら他の人と同じ部屋で行うミーティングが懐かしい」と語っています。
一方、オフィスに戻りたくないという人はたくさんいるようです。考えてもみてください。1 日に何時間もかかる通勤を懐かしむ人はどれほどいるでしょう?
OOO(「Out of Office」という意味、オフィス外で働く)な世の中は、従業員を雇用する会社が取り組むべき、これまで予期できなかったような問題を生み出しています。しかも、「パンデミックが終息したら従業員をオフィスに戻せばいい」という話ではありません。つまり、元の働き方に戻すことが問題解決の唯一の方法というわけではないのです。多くの仕事において、賃料の高いオフィスでみんなが働かなくても大きな成果が得られることが、今回のパンデミックによって証明されました。実際、私たちは仕事の質が生活の質を高め、また、生活の質が仕事の質を高めていく好循環「OOO ループ」が生まれていることに気づき、それをさらに促進していこうと考えています。
mmhmm では、OOO な世の中における働き方へのコミットとしてガイドラインを設けています。ここでは、オフィス外の場所で遭遇する 4 つの問題と、その解決策をご紹介します。
問題 1:物価の高い特定の都市の人々に高い給料を支払っていること
解決策:給与を世界的に平準化する
OOO な世の中では、人々は住む場所など自分自身の生活に関する選択を、上司の許可を得ずとも自由に行えるべき。人々が好きな場所で生活できるようにすることを許すならば、報酬は地理的な条件に応じて支払うのではなく、成果と専門性に応じて支払うべきです。
しかし給料を下げてしまっては、物価の高い都市で人材を獲得する競争に勝てません。そこで私たちは「同一労働・同一賃金」の約束を実現するために、職種ごとに国別の統一の報酬水準を設定し、水準が低かった都市の給与を引き上げています。この水準は各国の報酬データに基づいて毎年算出され、各国の最も物価の高い市場で競争力を持つように調整。現在の報酬がこの水準を下回っている場合、自動的に報酬をアップする(ただしダウンはしない)仕組みになっています。
例えば mmhmm の米国での報酬水準は、物価の安い地域の一般的な給与よりもサンフランシスコやニューヨークの賃金に近く設定されています。私たちが目指すのは、あらゆる地域で採用競争力を持つこと。つまり、物価の安い地域や国では(時には「かなり」)相場を上回る給与を支払っていることになります。これはバグではなく、仕様です。
将来的には、世界共通の給与体系に移行したいと考えていますが、世界の報酬水準・税負担・経費などには大きな差があるため、しばらく時間がかかるでしょう。当面は、似たような国のグループでレベルを計算し、徐々に物価の安い国の報酬を増やして格差を縮めていく予定です。
問題 2:オフィスを持たない社員も生産的な職場環境を必要としていること
解決策:従業員のワークスペースにかかる費用を補助する
オフィス外の場所で働くということは、必ずしも自宅で仕事をすることを意味するわけではありません。子供が駆け回ったり、ルームメイトがオンライン会議に参加する狭いリビングルームで、仕事をすべきではないはずです。私たちはオフィスを持つことを辞めはしましたが、社員への責任を放棄したわけではありません。社員が生産的、かつ健康的な環境で働けるように、私たちは全員の給与に分散型設備補助金(「OOO マネー」とでも言いましょうか)を支給しています。これは、より高速なインターネット、より大きなホームオフィス、コワーキングスペースの会費、より良いデバイスや家具など、各従業員がより健康的で生産的な仕事環境を実現するために使うことを意図しています。私たちは、このお金をどのように効果的に使うべきかの手引きや助言は提供しますが、領収書や証明などは必要としていません。この補助金は、現在従業員 1 人当たり月額 800 米ドルに設定されています。
問題 3:オフィスでの交流がないと、人間関係や信頼関係が築きづらいこと
解決策:従業員同士が人間関係を構築するためのツールやインセンティブを提供する
オフィスでの日常的な交流は、信頼関係を築き人間らしい繋がりを構築することに役立ちます。しかし、オフィスにいることだけが仕事仲間の交流を促進する方法ではありません。私たち自身が開発しているツール mmhmm を使うと、物理的に離れて仕事をしたり非同期で仕事をする際に、ビデオを使ったよりクリエイティブな表現が可能になります。そもそもビデオを活用して仕事をすることによりどのような場合に同期・非同期的に仕事をするべきか、さらには、あえて対面で仕事をするべきかをとても強く意識するようになります。必要な時にはチームメンバーと直接会うことができますし、実際に積極的に会うようにしています。
また、ことあるごとに対面で会うことを奨励するのも重要です。このような集まりを推奨するため、社員が同僚と「タートルクロッシング」(「亀の交差点」の意味。親会社である All Turtles にちなんだ名称です。社員同士がコーヒータイムを楽しんだり、食事をしたりする集い)を持つと、その月に 100 ドルを支給することにしています。上司の許可や領収書の提出は必要ありませんし、仕事についての話をする必要もありません。重要なのは、食事をしながらでも遊びながらでも、お互いをよく知ることなのです。
問題 4:異なる時間帯の人々と働くと、会議をスケジュールするのが困難なこと
解決策:同期型ミーティングをキャンセルして、代わりに録画ビデオを共有する
異なる時間帯や生活リズムのメンバーと一緒に働くと、多くの人の時間合わせを必要とし、みんなを同時に拘束する「同期型」のミーティングは、とても非効率・非合理的であることに気づきます。まず、自分の勤務時間を決め、Slack やカレンダーで全社に公開し、勤務時間以外は通知をオフにしましょう。この境界線を尊重することは、密接に仕事をする同僚が異なるタイムゾーンに住んでいる場合、特に重要です。
次に、会議の大半はビデオ録画を活用した「非同期型のアップデート」で代用することを推奨します。もちろん、真の意味での議論や意思決定は、ビデオ会議、または直接会って同期型のミーティングで行えばいいのです。しかし同期的な時間はとても貴重なので、それは信頼関係を築き良好な人間関係を築くための活動にこそ取っておくべきです。もし、会議中にほぼ一人しか話さないのであれば、それは会議ではなく、時間の無駄です。
今の時代に、社員から支持される職場環境を提供するにはどうすればいいか。それは、社員が住みたい場所で、競争力のある報酬を受け取りながら、それぞれにとって都合の良い時間に働くことができるようにすること。これは私たちが導き出した答えです。
他に会社が取り組むべき課題はありますか?@mmhmmjp にツイートでお知らせください。専門家なども交え、共に解決策を探っていきましょう。